【11月ワーク】
仏前式
仏前式
仏前結婚式は、「2人の結婚は前世からの因縁であり、先祖の慈悲によるもの」という仏教の教えに基づき執り行われる。
そして、仏様とご先祖様にその「因縁」を報告し、感謝の気持ちを伝えることで、「来世までの結びつき」を誓う。
・現世での結びつきはもちろん、来世での結びつきまで誓い合う。
・僧侶から新郎新婦へ数珠が授けられる「念珠授与」という儀式がある。
・キリスト教式や神前式に比べ、相対的に安い費用で結婚式を挙げることができる。
・基本的に式に参列できるのは親族のみ!友人や同僚は参列できない
・仏前式では、式の最中は座布団の上に「正座」するのが基本
・数珠が必要
・誓いの言葉はないが、ご本尊にふたりの「結婚」を報告し、この「縁」に感謝を述べ、これからどんなふうに夫婦として生きていくかを誓言するというもの。
仏前式の誓いの言葉は「新郎新婦ふたりの誓い」であり、新郎が代表で読み上げる。
その内容についてはお寺、宗派によって異なり、決まった言い回しはないが、人前式のように何を伝えてもOKというわけではない。
●神前式との違い
神前式は仏教式と同じく、和装に身を包んで行う日本伝統の挙式スタイルで、基本的に仏前式も神前式も雅楽の演奏や三三九度の盃を交わすなど、
よく似たところもあるが、仏前式は仏教の教えのもと、仏様や先祖に結婚を報告するのに対して、
神前式は神道のしきたりに則って行われる結婚式で、神様に対して結婚を誓うという違いがある。
●基本的な流れ
1.参列者入堂
雅楽が流れる中、両親、親族、来賓の順で入堂し、本尊に向かって右側に新郎側、左側に新婦側の関係者が着席します。
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2.新郎新婦入堂
参列者が着席した後、媒酌人に付き添われて新郎が入堂し、媒酌人夫人に付き添われて新婦が左側の扉から入堂。
両者が中央で出会い、正面の本尊の前に進みます。
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3.僧侶入堂
新郎新婦が入堂した後、司婚者である僧侶の入堂。
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4.敬白文朗読
僧侶は本尊前にある礼盤に上がり、
仏様とご先祖様に結婚式を行うことを報告する敬白文を朗読。僧侶が敬白文を朗読する間、新郎新婦は頭を垂れ、参列者は起立して聞きます。
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5.念珠授与
新郎新婦は媒酌人の案内により、僧侶の前に向かい合って着席します。僧侶は仏前に供えてある念珠(数珠)を新郎新婦に授与。
白い念珠は新郎へ、赤い念珠は新婦へ授けられ、新郎新婦は念珠を受け取り、合掌します。
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6.司婚の辞
僧侶の求めにより新郎新婦は夫婦の契りを交わし、この誓いにより僧侶は参列者に婚儀の成立を宣言。
その後、媒酌人が新郎新婦のために誓詞を朗読します。
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7.新郎、新婦の順で焼香
誓詞の朗読後、新郎、新婦の順で、左手に念珠をかけたまま右手で焼香して合掌します。
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8.誓杯
神前式の三三九度にあたる誓酒の儀式。新郎新婦に続いて、参列者全員が親族固めの杯を交わします。
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9.法話
僧侶から新郎新婦へ祝いの祈りが捧げられます。
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10.退堂
一同が起立して合掌。その後、僧侶、新郎新婦、媒酌人、両親、親族の順に退堂します。
また、宗派によって違いがある(以下抜粋)
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●天台宗
天台宗の結婚式は「天台宗法式作法集」「天台常用法儀集」によると、次のように構成されている。
1.所役 ①唄師、②散華師、③影向衆、④会行事、⑤承仕口
2.衣体 戒師は、第一の律衣、第二の抱裳、納袈裟、中啓、数珠、第三の素絹、五条、切袴と略したものの、いずれかを用いる。
3.式場 仏前には紅白重ね御鏡餅、密担は密供とし担上に御酒具両台を安置する。
脇机には塗香と戒師の証明文、婚者に授与する念珠両連を用意。脇机の前で戒師に面したところに円座を設け、唄師は戒師の右方に別座を設ける。
男性親族は右側、女性親族は左側で、各席に盃台と昆布台を配置。
●高野山真言宗
高野山真言宗の結婚式は、宗で定めた様式はないが「真言宗諸法会作法解説全」によると、宮本義範氏の私案がある。
●真言宗智山派
真言宗智山派の結婚式は、宗で定めた様式はないが「智山派法要便覧」によると、
その式次第を灌頂の儀式に準じて定めるのがよいとして、試案を掲げるだけにとどめている。
●真言宗豊山派
真言宗豊山派の結婚式は「豊山派法則集・坤巻」によると、次のように構成されている。
1.結婚の大事は、金剛薩た(「た」は「土+垂」)の三昧に属するので、道場は理趣会曼荼羅に象り、荘厳等その趣旨にそって整える
2.道場の中央に婚壇を設け、名香、美華、華燭、塗香を荘厳、阿闍梨、新郎新婦、媒酌者、近親、親友、酌童のほかは、これに参列させてはいけない
3.新郎新婦に渡すべき記念品は、指輪あるいは念珠とする
4.阿闍梨の装束は長素絹・紋白五条・差貫とする
●臨済宗妙心寺派
臨済宗妙心寺派の結婚式は、宗で定めた様式はないが「江胡法式梵唄抄」の参考例による。
●浄土宗
浄土宗の結婚式は「浄土宗法要集」によると、次のように構成されている。
1.仏前の荘厳は清素にし、正面に紅白の鏡餅を供え、紅燭を用い松の立華などを献ずる
2.仏前に香爐華瓶を備える
3.別に祭壇を設け両家の霊牌を安置
4.内陣正面に導師座、外陣に高座、その前卓に洒水器などを用意し、三方に寿珠二連を備える
5.高座前に新郎新婦の席、その前の小机に香爐、硯などを備える
6.式場の外側は屏風、紅白の幕などを用いる
7.奏楽を用いるときは簾内で奏する
8.新婦は行草用の花七本を持ち着席
●浄土真宗
浄土真宗の結婚式は、真宗各派協和会の議定によって各派共通の門信徒の式を、次のように定めている。荘厳については、
1.御本尊前の上卓前卓に打敷を掛ける
2.紅白の鏡餅一対、あるいは根、菓、餅、各一台を備える
3.立花は若松の真に色花挿し交ぜ、または松一式
4.三尊前に燈明を点じ、中尊前立燭焼香
5.金障子は三尊前のみ開く
6.外陣正面金障子際に小卓を置き、香爐と香盒を載せる
●浄土真宗本願寺派
浄土真宗本願寺派の結婚式は、真宗各派協議会により荘厳などについては同様。
●真宗大谷派
真宗大谷派の結婚式は、昭和43年3月8日の「宗務所告小第五号」に基づき、荘厳については真宗各派協議会によるものと同様に構成されている。
●時宗
時宗の結婚式は「時宗法要軌範」によると、第一の要件として鳴り物に注意し、
雲版・印鑿・契杓以外は用いないとして、通常法要とを区別し、次のように構成されている。
1.本尊前に供える一升二合取りの紅白の餅、新郎新婦の祖先の霊を祭る、
供物はめでたい菓子菓物、生花は松竹梅
2.洒水器に紅白の紙水引をして飾り、朱蝋、蓬莱山、または三具足、銚子盃各一対を準備
3.新郎の年齢白餅、新婦の年齢紅餅を準備
4.戒師の装束は荘厳衣、如法衣、司会者は布教衣、五条、他の僧侶は布教服か絞服
●日蓮宗
日蓮宗の結婚式は「日蓮宗信行要典」により、構成されている。
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●歴史
仏教式の歴史は古く、江戸時代に自宅の仏間にて行われていた結婚式がもとになっていると言われている。
正式に仏前式の規定が定められたのは1885年(明治18年)のことで、かつて日蓮宗に属していた僧侶が開設した「国柱会」によって、
仏教の教えに基づいた結婚式の基準を設けたことがはじまり。
そして、1892年(明治25年)に浄土真宗本願寺派の宗教家・藤井宣正が東京白蓮社会堂にて結婚式を挙げたことがきっかけとなり、
各宗派に仏前式が普及された。
●衣装
新婦
新婦の装いは、神前式と同様に和装の婚礼衣装の中でも最も格式が高い「白無垢」が一般的。
白無垢は、一番外側にかける「打掛」と打掛の内側に着る振袖「掛下」、身につけるその他の小物が全て「白」で統一されている。
また、髪型は文金高島田で、白無垢には「綿帽子」、それ以外には「角隠し」をつけるのがしきたりとなっている。
新郎
新郎の装いは、新婦同様に和装の「羽織袴」が一般的。
選ぶポイントは、新婦の装いと「格」を揃えること。新婦が正礼装の「白無垢」の場合は、新郎も正礼装の「黒五つ紋付き羽織袴」を選ぶ。
新婦が白無垢や色打掛、黒引き振袖、本振袖以外の振袖を着る場合は、新郎も新婦に合わせた略礼装に。
また、新婦がウェディングドレスを着る場合は、新郎もタキシードでもよい。
洋装も許される仏前式だが、ウェディングドレスやタキシードが寺院にそぐわないという理由から、披露宴で着たり写真を別撮りしたりするカップルも多いとのこと。
●演出
・塗香(ずこう)・洒水(しゃすい)
新郎新婦は香を焚きしめ、みそぎをし、心身を清める。ここではお香を塗って、頭頂に水を注ぐしぐさをする。
・聖句・証明授与
聖書の中から新婚者にふさわしい名言を読み上げられる要領で、お経の中から、含蓄のある一句が与えられる。そして戒師より、証明が授与される。
・結婚者の宣誓・献香(けんこう)
新郎、胸元から宣誓文を取り出し、読み上げ、名乗る。新婦もこれに続く。
献香とは2人がお焼香をすることで、薫りは彼方まで届くということで、
立ち会っておられない有縁無縁のみなさまに、宣誓を届ける。